今日は我慢しない。
「え?」


 佐柳の声がして顔をあげた次の瞬間、ドン!と目の前に手が突かれた。


「!」


 フワッとαの匂いがした。


「っ、セーフ」


 佐柳は私を棚との間に挟むように手をついて、私の頭上で重そうな辞書を受け止めていた。


「あ、ありがとう」


 どうやら私が棚にぶつかった拍子に辞書が落ちてきたのを、佐柳が取ってくれたみたいだ。

 さっきあぶないって言った声は遠かったはずだけど……一瞬でここまで走って辞書を受け止めたってこと?

 やっぱりαの身体能力、すごいんだな……

 そんなことをぼんやり考えていると、佐柳がなにかに気付いてハッと口元に手をやった。


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