今日は我慢しない。
「思った! 今日なんか全力だよね。 いつももっと手加減して男子たちに優しいよねー」


 言われてみれば、佐柳らしくない。

 佐柳が全力を出したら誰も勝てるわけないことを、佐柳自身も当然わかってるはず。

 みんなが楽しくできるよう気を遣って加減しそうなのに……あの真剣な眼差しは闘争心が漲って見える。

 なにかあったのかな?


「C組に嫌いな男子がいるんじゃない?」

「えー佐柳が嫌がらせするってこと? あはは、ないでしょ〜」

「ないない、超平和主義じゃん」

「逆に好きな女子がいて、かっこいいところ見せたいとか!?」


 『好きな女子』という単語に、なぜかドキッとした。

 そういえば佐柳のそういう浮いた話は聞いたことがない。


「あはは!少女漫画じゃん!」

「いやーないでしょ! 佐柳って特別仲良い女子いないし、こないだもB組の子に告白されて断ってたよね?」


 ……そうなんだ。 告白断ったんだ。

 特別仲良い女子もいないんだ。

 私は小さくほっと息をついた。

 ……ってなんで今ほっとした?

 てか私聞き耳たてすぎか。


「ほんと隙がないよねー。 恋愛とか興味ないのかな」

「それかあれじゃない? 隠れ本命!」


 もう聞くのをやめようと思うのに、今度は『隠れ本命』という単語が気になってしまう。


「みんなに言わないだけで、実はいい人がいるとか!」


 『いい人』……?


 思わず、佐柳のいる方へ目を向けた。

 すると、


「!」


 今まさにアタックを決めようとする佐柳とバチッ!と視線が交わった。

< 48 / 183 >

この作品をシェア

pagetop