恋をしたのは姉の夫だった人

予期せぬ温もり

 若田の告白には衝撃を受けた。
呆然としている優に、彼は「返事はまだ先でいいですから」と、言うので、返事もせぬまま別れたのだった。


 ぼんやりとした頭で瑞樹の家へと行く優。
迎えてくれたのは、顔いっぱいを笑顔にした心だった。

「いらっしゃい、優ちゃん!待ってたよー!」

 心にギュッと抱きつかれ、胸がほっこりとする。
優は叔母の顔を貼り付けて、小さな体を包み返す。

「いらっしゃい、優ちゃん」

 瑞樹が玄関へ来て、優しく微笑んだ。
優の胸は、今夜もトクンと音を立てる。

「こんばんは、お邪魔します」

 小さくはにかみ視線を落とすと、心が優の袖をくいっと引く。

「ね、優ちゃん、これ何?お土産?」

 心の視線は優の手元に熱心に注がれている。

「そうなの、心へのお土産だよ」

 途中に寄った団子屋でいくつか団子を購入してきたので、袋を心に差し出す。

「え、何?開けていい?」

 優が頷くと、心は「わーい、ありがとう!」と、飛び跳ねて、袋をさらってリビングへ駆けていった。
まるで小動物の様で可愛くて、クスッとしてしまう。

「優ちゃん、気を遣わせたね、ありがとう」

「いえ、心の喜ぶ顔が見られて嬉しいです」

「そう言ってくれて、嬉しいよ」

 優は心で、そんなお義兄さんの優しい笑顔を見られて嬉しい……と返す。
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