神に選ばれなかった者達 前編
夢の中で見た光景。

あのおぞましい分娩室や、保育室の檻のことについて。

私は、お兄ちゃんと言葉を交わすことをしなかった。

お互いに、話題にするのを避けるように。

その後『処刑場』の掲示板で、あの建物がやっぱり病院であること。

建物は四階建てで、私とお兄ちゃんがいるフロアは二階であること。

フロア間の移動は不可能であることなどを、響也さんが教えてくれた。

そしてその翌日から、響也さんとみらくさんは『処刑場』に現れなくなった。

気の毒だけど、私とお兄ちゃんも、自分のことで手一杯で。

響也さんとみらくさんのことを、助けてあげる余裕がなかった。

今回の悪夢は、私とお兄ちゃんにとって。

自ら蓋をして、ずっと避けてきた己の過去に向き合うのも同然だったから。

それでも私達は、生贄の身である以上、何処にも逃げる場所などない。














空に望みを託すとてⅢ END




 
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