『またね』という小さな約束が
果たされたのは、あれから11年後。

何度も引越しを繰り返して、
再びここに戻ってきたんだ。


髪は、あの子が1番好きだと言っていた
桜の色に染めて。



最初姿を見た時は、気づかなかった。


信号無視した車が彼女の方に向かっていた。

まだ距離はあったので、
逃げようと思えば逃げれるはずなのに

彼女は車を真っ直ぐに見て、
悲しそうな、
そして諦めたような表情をしていた。


……ウミ、ちゃん?


彼女の横顔を見て、
それがウミちゃんだと気づいた。





「ウミッ!!」





俺の体は勝手に動いていた。

彼女の背中に、片手が触れた。


そして強く、俺は彼女の体を前に押す。


その瞬間、俺は車に突き飛ばされた。


……あっつい。……さむ……い。

痛い……。


周りから、すごい悲鳴が聞こえる。

ウミ……ウミは……


少し先に、倒れ込むウミの姿があった。

……大丈夫。車には当たってない……から、
きっと、生きてる……。



あぁ……また、話したかったな。

迷子の俺を助けてくれた、
明るくて優しい彼女が、

なぜ車を避けようとしなかったのか
わからないけど、

もし君が道に迷っているのなら、
今度は俺が、手を差し伸べたい。


前に進もうか迷っているのなら、
背中を押してあげたい。

君の見る世界を、美しくしたい。


そして、願わくば君の心の片隅にでも、
俺がいてくれたら嬉しい、だなんて思ってた。





俺の意識は、そこで途絶えた。








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