桜side








小学1年生の頃だった。

引っ越してきたばかりで、
友達との遊びの帰り、
道に迷ってしまったんだ。

1時間くらい、さまよってたと思う。


辺りは暗くなって、本当に心細かった。





「だいじょーぶ?」





柔らかい、優しい声に顔を上げると、
そこには小さな女の子がいた。

同じクラスの、うみちゃん。

話したことはなかったが、
名前だけ覚えてる。





「え……な、なんでここに」

「うみのおうち、この近くなの。
えっとー……なまえ、なに君?」

「さくら」

「さくらくん!そうだ思い出した。
うみね、お花の中でいちばん桜すきなの」





その子の笑顔は、桜と言うよりヒマワリで、
夏って感じの子だなぁと思った。





「こんなところでうずくまって、
なにしてたの?」

「まいご……みたいな」

「おうちわからないの?」

「うん……」

「じゃあいっしょにさがしてあげる!」





そう言って、
笑顔で手を差し伸べてくれた彼女は
まるでヒーローみたいだった。

そうして俺はうみちゃんと手を繋ぎ、
歩き回った。





「……あ、ここの道、しってるかも」

「ほんと!?じゃあちかくかもだね」

「この分かれ道、どっちだっけ」





俺たちは分かれ道を前にして、
棒立ちしていた。





「おもいだした!ひだりだ」

「よかったぁ。うみ、みぎから行くと近道なの。
ここでお別れだね」

「じゃあ、またあした」

「うん!またね!」





しかし、
明日から夏休みだったのを思い出して、
俺たちが次会うのはまだまだ先なんだと
少し寂しく思ったのを覚えている。


……あ、そういえばおれ、
お礼言えてない……!

まぁ、夏休み明けに会えるかって、
軽く考えていた。





「え……またひっこし?」

「えぇ。お父さんのお仕事の都合でね。
海外に行くことになったの」





その時1番に頭に浮かんだのは、
海外楽しそうだなってこと。

そして次に浮かんだのは、
うみちゃんのことだった。


お別れ……言いたいな。


そう思ったが、彼女の家も知らないので、
結局最後にお別れを言うことはできなかった。









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