彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
私に佐々木さんが話を振った。私はびっくりして顔を上げた。
「それにしても、先生。フォーブズに載ってしまったし、午後からが怖いですね」
佐々木さんが苦笑いしている。
「そうですね、電話とかきっとすごいですよ」
池田さんも言った。
「悪いが今日は繋がないでくれ。席を外していると言っておいてほしい。折り返しは明後日以降に。まず頼みたいことがある」
今朝ほど書いてきた婚姻届を先生は二人の前に広げた。
「この証人を僕らを一番よく知る二人に頼みたい」
そう言うと、先生は佐々木さんと池田さんに頭を下げた。私も横で頭を下げた。
「「は?えー!!」」
ふたりは驚いたんだろう、ガタンと音を立てて立ち上がった。
「婚約者設定は本気だったんですね……良かった……」
佐々木さんが笑った。先生は佐々木さんを正面から見て言った。
「もちろん本気だ。この結婚はお互いにメリットがたくさんある」
先生の顔を見て驚いた。仕事の説明みたいな顔になっている。結婚なのにメリットなんていう説明……絶対よくないような気がする。案の定、佐々木さんが先生をにらんだ。
「メリットって……先生、まさか……」
バンと机を叩いた佐々木さんは先生にかみついた。
「先生、言うに事欠いてそれはないんじゃありませんか」
うんうんと頷いて池田さんも言った。
「先生らしいと言えばそうですけどねえ……その言い方は水世さんがあんまりにも可哀そうですよ」
「佐々木さん。君は離婚経験者だ。しかもその手の案件を手掛けている。君はクライアントになんて最近言っている?愛より条件、愛より金……事前に契約書を交わす結婚が最もお勧めだと言っていなかったかな?」
佐々木さんは目を三角にして言い返した。