彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「……そう……」
ドアが開いて、先生が出てきた。
「佳穂、ちょっと……蛍も入れ」
ふたりで顔を見合わせて席を立った。怖かった。先生は立ち尽くす私の背中を押して一緒に入った。
先生の部屋に入ると、応接セットのソファにお父様が座っていた。蛍さんはお父様の隣に座り、私は先生の隣に腰かけるよう指示された。
座って気づいた。ピーンと張りつめた空気がお父様の視線から感じられる。蛍さんも何かに気づいたようで黙っている。
「櫂からアメリカで君と婚約をしていると聞いてね。いや、こいつが私に黙ってそんなことをするとは、正直本当に驚いた。帰国して数日しか経っていないのに、今度は君にプロポーズしたから先に籍を入れたいと電話が来た。君の背景も聞かせてもらったよ」
「父さん!反対しないと言ってくれたじゃないか」
「反対だと言ったわけじゃないよ。水世さんと会いたかったんだ、当たり前だろう」
私は立ち上がって頭を下げた。
「ご挨拶が遅れ、本当に申し訳ありませんでした。ご存じの通り、私は父のこともあり結婚は諦めていました。先生の縁談がなくなれば私も用済みかもしれないと思っていたのでご挨拶を控えさせてもらっていました。私は祖父母にも話していなかったんです」
蛍さんは驚いたのか口を両手で覆っている。
「櫂、お前は結婚や恋愛を遠ざけていただろう。川口君も心配していた。彼女のことが好きなのか?」
「当たり前です。リンダのことがなくても僕はいずれ佳穂を妻に迎えたいと思っていました」
「佳穂さん」