キスで溺れる同居生活〜年下御曹司は再会した幼なじみを愛し尽くしたい〜
「――千歳綴さん、ですね」
突然名前を呼ばれてハッとした。
振り返ると、真っ黒いタキシードにモスグリーンの仮面を付けた男の子が立っていた。
「僕と踊っていただけませんか?」
「……結川くん?」
「そう」
結川くんはにっこりと微笑む。
「約束通り、見つけ出して迎えに来たよ」
「……っ」
本当に見つけてくれるなんて。
「そのドレス、すごくかわいいね。とても似合ってる」
「ありがとう。結川くんも素敵だね」
「あ、ありがとう」
仮面越しでも照れくさそうにしているのがわかった。
「千歳さん、約束通りダンスのパートナーになっていただけますか?」
結川くんはそう言って手の差し伸べる。
これは約束だ。この大勢の中から結川くんは見つけ出してくれた。
だから、この申し出には応えないと――。
大丈夫、ダンスタイムはまだあるもんね。
「はい、よろこん――」
差し伸べられた手を取ろうと自分の手を伸ばしたその時、視界に入った人物に目を奪われる。
中央にある階段の上にいたのは、真紅の仮面を被った人物。
漆黒のタキシードに白い花を一輪挿していた。
黒髪だったけど、その人物はあやくんだと確信した。
「……千歳さん?」
「っ、ごめんなさい結川くん……やっぱり約束は守れない」
「えっ」
「私、王子様に迎えに来てもらうより迎えに行きたいの!」
「ちょっ、千歳さん! 待って!」