【連載中】エリート調香師は、初心な新妻を口説き落としたい。
ホテルに着いた。
個室が用意されたレストランへ通される。白いクロスのかかったテーブル、窓の外には緑の見える中庭。落ち着いた空間だった。
心彩たちが席に着いて少しして、扉が開いた。
最初に入ってきたのは、先日お会いした月森綾斗様。
その後ろに、もう一人。
心彩の視線が、自然とそちらへ向いた。
背が高い。それが第一印象だった。百八十センチは優に超えているだろう。黒のスーツが、長身の体躯に無駄なく沿っている。
髪は少し長め、きれいに整えられているが、どこか気怠げな雰囲気がある。
顔は、整っていた。
絵画のような、という表現が心彩の頭に浮かんだ。目鼻立ちが鮮明で、彫刻のように端正なのに、その表情がひどく薄かった。感情の色が、ほとんど見えない。
冷たい人だ、と思った。第一印象で人を判断するのはよくないと知っていても、そう思わずにはいられなかった。
ふと気づいたことがある。
玲央には、華道家元である伯父の郁斗と、どこか面影が重なる部分があった。骨格の高さや、立ち姿の静けさ。しかし郁斗が持つ、人を惹きつける華やかさのようなものは、玲央にはない。
その代わりに、郁斗とは全く異なる種類の、研ぎ澄まされた静けさがあった。
月森玲央は席に着きながら、心彩を一瞥した。
一瞥、という言葉がぴったりだった。視線がぶつかった時間は、おそらく一秒にも満たない。
それなのに心彩は、見透かされたような感覚を覚えた。何を見透かされたのかはわからない。ただ、その黒い瞳に、確かに自分が映り込んだと感じた。