『Special Edition③』
スペイン村に向かう道中で、夢で見た子羊の話を忍にしたから、自分も夢が見たくなったのかもしれない。
夢って、いつ頃から見て覚えてられるのだろう?
子供の頃って、疲れて寝ることが大半だから、夢を見ることなく朝を迎えるんじゃないかと思うけれど。
小学校に上がった頃には、夢で見た出来事を友達に話していた記憶も薄っすらとある。
「初夢って、いつ見たのが初夢なの?元旦とか2日?それとも、今年になって初めて見た夢?」
「元旦から2日にかけてじゃなかったか?」
「そうなの?」
「……たぶん」
「じゃあ、私のは初夢にはならないか」
「俺も見てないから、そんながっかりすんなって」
「はつゆめってなーに?」
「1月2日の朝起きた時に見た夢みたいよ?」
「元日、または2日の夜に見られなければ、その年の最初に見た夢が初夢になるって。昔は立春を正月にしてたから、つぐみが見たのは初夢でいいっぽい」
「本当?」
「……説は色々あるみたいだから、いい方にとっておけばいいだろ」
「フフッ」
仕事柄なのか、間違ったことが嫌いな峻は、すぐさまスマホで『初夢』を検索したようだ。
ビールをグビっと飲みながら、仕入れたばかりのうんちくを語り始めた。
「忍、スカイレンジャーの夢が見れるといいな」
「うんっ!!」
「よーし、軽く運動して、もう1回露天風呂に入るかな」
スイートルームを思わせるこの客室には、広々としたリビングが設えてあり、ソファの横にスッと立ち上がった峻。
浴衣の上に来ている羽織を脱ぎ、カモーンと言わんばかりに忍に合図を送った。
長身の父親の上腕に飛びつく忍。
鉄棒にぶら下がるみたいにして、お互いに力比べを始めた。