『Special Edition③』
2月下旬、経理部内にて。
月末月初の忙しさに追われながら、年度末に向けての書類が日々蓄積されてゆく。
更に、数年に一度の大感謝セールが行われていて、『WING』社内は、活気と狂気が入り混じっているような雰囲気。
「あゆちゃん、忙しいところ悪いんだけど、送金一覧のチェックお願い出来る?」
「はい、これが終わったら確認しておきます」
「ありがとう、助かるよ」
前島部長は重役会議に使う資料を纏めていて、手が回らない状態。
結婚して5年近くが経ち、もう鮎川ではないのに未だに『あゆちゃん』と呼ぶ先輩。
もうすっかり定着しているから、今更変えれないらしい。
つぐみは派遣スタッフに売掛と買掛のデータを割り振り、溜まっている領収書業務をしている。
「そう言えば、専務が来年度の新入社員を経理部に回してくれるって言ってた」
「そうなんですか?!」
「下山部長の頃からずっとお願いしてたしね。さすがにこの地獄のような月末月初を女性中心っていうのはね~」
他の部署と違い、経理部は少数精鋭だが、男性社員1人、派遣社員の男性スタッフ1人と男性が2人しかいないのだ。
月末月初に早朝から深夜までほぼ女性スタッフという状況を、前島部長が直談判してくれたらしい。
「即戦力求む、ですね」
「本当、即戦力求むだよね」
唯一の正規職員で男性社員の外ノ池くんが、ぼそっと呟いた。
いつも女性スタッフの中で居心地が悪いだろうなぁとは思ってたけど、やっぱり可愛がれる男性の部下が欲しいよね。
「なんか急に甘いものが欲しくなって来ました。下のコンビニで何か買って来ますけど、買って来て欲しいものとかありますか?」
つぐみはお財布を手にして立ち上がった。