『Special Edition③』
『WING』の本社ビルのすぐ目の前にコンビニがある。
社食でお昼を取り損ねた時やちょっと小腹が空いた時に利用しているが、結婚前は経理部と同じフロアの資材部の人とかに行き会うと、よく奢って貰ったりしていた。
さすがに結婚してからは相手も気を遣うし、私も気が引けて挨拶程度で済ませている。
「先輩、これ今日からの新商品のやつですよ」
「どれどれ?」
後輩の和田 香苗が新発売のさくらクリームのどら焼きを手に取って、つぐみへと見えるようにした。
この春限定の、桜の花びらと塩漬けされた柏の葉が刻まれて入っているクリームが、ふんわりと焼き上げられた生地に挟まれている。
「幾つある?」
「5個です」
「じゃあ、ジャンケンになるかぁ」
「こっちの桜餅も今日から発売のやつなので、どっちか1つってことにすればいいのでは?」
「あっ、その手があったね」
期間限定スイーツのコーナーには幾つかの商品が置かれていて、つぐみはそれらを人数分カゴに入れた。
「先輩持ちますよ」
「……ありがとう。欲しいものがあったら、入れていいよ」
「先輩の奢りですか?」
「もちろん。残業用に何か、買っておこうかな」
月末月初は嫌でも残業になる。
夕食自体は出前を取ったり、お弁当を買ったりするけれど、帰る頃にはすっかりお腹が空いているのだ。
「最近、先輩甘いものばかり食べますよね」
「そう?前から甘いのは結構好きで食べてるけど、……体重量ってないからヤバいかも」
「えぇ~それは大丈夫ですよ~。10キロ太っても全然OKです」
「さすがに10キロ増えたら見た目のフォルムが変わるよ」