『Special Edition③』
妊娠したくないわけじゃない。
むしろ、そろそろ2人目が欲しいくらいだ。
だけど、忍の時のような吐気を催すつわりがなくて、何も気にせずに毎日ブラック珈琲を何倍も飲んで、お酒だって幾らか飲んでしまっていた。
妊娠したいと思ってる時点で控えるべきだった。
5年ぶりなこともあって、すっかり忘れていた……あの頃の感覚を。
トイレの個室で、無言で試験薬を見つめる。
数分後――――。
「……あ」
***
「おかえり~」
「……ただいま」
「お風呂湧いてるから、先に入っておいで」
「峻」
「ん?」
23時過ぎに帰宅し、一人で晩酌していたのか。
少しアルコールの匂いを纏った夫が出迎えてくれた。
「ちょっといい?」
「……ん、何?」
彼の腕を引き、リビングのソファに腰を下ろす。
不思議そうな表情を浮かべる彼の目の前に、バッグから取り出した例のアレを差し出した。
「妊娠したっぽい」
「ッ?!……マジで?!!」
「うん。これ、結構な確率で分かるから。明日は月末だし、月初の仕事もちょっと休めないから、来週末頃になるけど、病院に行って診て貰うつもり」
「俺も付き添うよ」
「え~いいよ~、2人目だし」
「こういうことは、2人目とか関係ないだろ」
「……そうなのかな」
「そういうもんだよ」
自然と絡まる視線。
彼の嬉しそうな表情で、不安だらけの心がほんの少し軽くなった気がした。
「そう言えばね、一昨日、可愛い赤ちゃんの寝顔の夢みたの」
「夢?」
「うん。お正月の時の子羊の寝顔にそっくりな、女の子っぽい赤ちゃんの寝顔」
「それ、予知夢?」
「……そうなのかな?だとしたら嬉しいね。忍、妹が欲しいって言ってたしね」
「だな」
