募る想いは果てしなく
 青木さんはいつだって優しかったし、会えない日はメールや電話を欠かさないでいてくれた。
 その細やかな配慮に何度舞い上がったことだろう。
 多忙の身でありながら、それでも僅かな時間を削って会いに来てくれる彼に不満なんてあるわけがない。
 むしろ感謝していたし、将来結婚するならこの人だろうなって、そう信じて疑わなかった。

 ――実は既に結婚していて、現在妻と子と一緒に暮らしてるって自己申告されるまでは。

「天国から地獄だな」
「ほんとにね」
「それで? 今もソイツで悩んでるってことは、結局その男を忘れられないって事か?」
「それはないよ」

 きっぱりと答える。
 早坂は面食らったような顔をした。

「妻子がいるって知った時点で気持ち冷めたよ。私の純情返せよって思ったし」

 すごいよね人間って。
 あんなに燃え上がるような恋をしてたのに、熱が冷めるのは一瞬だったもん。

「もう半年も経ってるし、あの人に何の情も抱いてない。離れたことに未練はないよ」
「……そうか」
「でもさー、聞いて? 何度も別れようって言ってるのに、全然納得してくれないの」

 そして話は振り出しに戻る。
 ムカムカとした怒りがまた湧き上がってきた。
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