募る想いは果てしなく
「不倫なんて絶対嫌だし、青木さんの家庭を壊すつもりもないし、だから私が身を引くって決めたのに。僕は君と別れましぇんっ! の一点張りで」
「言い方」
「しかもだよ? 私と別れるくらいなら妻と離婚するとか言い出したの。そんなの絶対嘘じゃん」
「不倫したい奴が使う常套句だな」
「なんなのよ男って。そんなに不倫がしたいの? 刺激的なの?」
「俺は違う」
「もう顔も見たくないのに逐一連絡くるし。最近しつこすぎてホントやだ」
「やばくね、ソイツ」
「やばいんだって」

 私がどんなにヒートアップしても、早坂はいつも冷静沈着だから助かります。

「これってもうストーカーだよね?」
「七瀬が不快に思うならそうなるな」
「この部屋にも盗聴器仕掛けてるかもね。あはっ」
「笑い事じゃねーよ」

 空気が重くならないように茶化してみたけど空振りした。どうやら裏目に出たらしい。
 とはいえ、早坂に不機嫌な様子はなかった。

 突然こんな話を延々と聞かされて、面倒だと思われても仕方ないのに。
 でも早坂は何も言わなかった。
 否定したり、一方的に説教することもない。
 まず私の主張を優先的に聞いてくれた。

 そのお陰で私はストレスを感じることもなく、心の奥に溜まっていた鬱憤を晴らすことができたんだ。早坂の神対応に感謝するしかない。

 ……本当は自分でもわかってる。
 無知であれば何でも許されるわけじゃないって。
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