募る想いは果てしなく
「遥、早坂って誰? お友達かな? それとも男?」
「……女、友達」
「嘘つくな。男だろこれ」
「ちがうっ、」
「なんで俺と話してる時に他の男に連絡しようとしてんだよッ!」

 逆上した青木さんが、再び片手を振り上げる。
 胸ぐらを掴まれて、パンッと右頬に音が弾けた。

 口内に鉄の味が広がっていく。
 唇の端が切れたんだろう。
 殴られたのは頬なのに、身体中が痛みで悲鳴を上げている。

「遥、自分が何したかわかってる?」
「……っ、痛、い」
「そうだね、痛いね。でも、俺はもっと痛いよ。こんなに綺麗な遥を殴らなきゃいけないなんて辛いよ。ねえ。全部遥が悪いんだよ? 浮気なんかするから、俺から離れようとするから」

 どうしてそうなるんだ。
 浮気してるのはアンタじゃん。
 さっきから言ってる事がチグハグだ。
 案外面白いなこの人。

「浮気されたのは悲しいけど、でも俺は寛大な男だから。謝ってくれれば、1度目の浮気は許してあげる。もちろん2度目はないけどね。ほら、ちゃんと俺に謝って」

 ……今、ここで素直に謝れば。
 きっと、この人は大人しくなるんだろう。
 歯向かえば、また殴られる。
 そんなことは容易く予想できた。

「……いやよ。誰が謝るもんか」
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