募る想いは果てしなく
 視線だけを動かして確認する。
 それは私のスマホだった。
 倒れた拍子に、コートのポケットから滑り落ちていたらしい。
 床に落下した際にスリープ機能が解除されたようで、画面にはLINEのトーク画面が表示されている。

 瞬間、真っ先に頭に浮かんだ。

 何かあったら連絡しろ、
 そう言ってくれたアイツの顔。



 ――……早坂、

 早坂、ごめん。
 助けて。



 震える指先が通話アイコンに触れる。
 爪先でタップして、脱力した手を画面から離した。

 咄嗟に早坂へ電話してしまったことを、青木さんに悟られちゃいけない。
 会話なんてできなくてもいい。この状況を電話越しに聞いてくれたら、早坂ならすぐに事態を察して助けに来てくれる。アイツはそういう奴だから。

 だからお願い。
 気付かれる前に電話に出て。
 祈るように願いながら、彼に繋がる瞬間を待つ。

「――今、何したの?」

 ……だけど。
 やっぱり青木さんは見逃してくれない。

 スマホを奪われて、絶望的な心境に陥る。
 青木さんの指が画面を軽くタッチして、通話を切られたことを悟った。早坂に繋がる前に、助けを求められなかった。

 そればかりか、最悪な展開になった。
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