募る想いは果てしなく
 私がいま抱えているのは不倫問題だ。
 首を突っ込めば面倒なことに巻き込まれる、賢い彼女ならそんな事くらい予想できるはず。

 現に私に関わったせいで、トラウマになりかねないほど怖い思いもしたはずなのに。
 それでもかなえちゃんは必死に、私達に関わろうとする。

「だって、七瀬さんも早坂さんも私の憧れで、大好きですから」
「……」
「好きな人達を応援したいのは普通です」

 頬を染めながら彼女は笑う。
 私がよく知る無邪気な笑顔。
 そのあどけない表情が眩しくて、私は膝元に視線を落とした。



 社会の仕組みも汚さも。
 大人の狡い考え方すら知らない。
 どれだけ大人びていても、彼女はまだ、たった19歳の女の子なんだ。

 だから思う。
 経験値を圧倒的に積んでいるはずの私達は、かなえちゃんの言う"普通"の感覚を見失いかけている。
 余計な知恵をつけたばかりにずる賢くなって、逃げ方を覚え、年を重ねる度に臆病になる。
 子供から学ぶ事が多いと大人はよく言うけれど、こういうことなのかもしれない。

 ……かなえちゃんは。
 やっぱり知るべきじゃなかったんだ。
 ずる賢い大人達の、こんなにも拗れた恋愛事情なんて知る必要なかった。

 憧れ、なんて言ってもらえるような。
 そんな見本になれるような人間じゃない。
 そんな綺麗な大人じゃないんだよ……私は。
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