募る想いは果てしなく
「だって焦れったいんですもん。早坂さんは常に一歩引いてるし、七瀬さんは早坂さんに見向きもしないし」

 どこか不満めいた口振り。
 でも私を責めているような響きはなくて。

「早坂さんが消極的だった理由が、七瀬さんに彼氏がいたからだって、今回のことで知って納得しました。でも、別れ話してるんですよね? その人に気持ちも無いんですよね? なら早坂さんのこと、ここから考えてほしいんです。考えて、それでも同僚以上に思えないなら、私もこれ以上は何も言いませんから」
「……かなえちゃん」
「私、もう嫌ですよ。早坂さんの寂しそうな顔見るの。報われない恋を何年も抱いてるなんて、そんな悲しい話ありますか」

 凛とした声が心に響く。
 冗談やからかいなんかじゃない。
 確固とした響きを持つ言葉に何も言えなくなった。

 私と早坂との仲を茶化すわけでもなく、だからって交際を強要させるわけでもない。彼と築いてきた親友同然の関係をこのまま保つのか、それとも変えていくのか。
 どんな形であれ、早坂の気持ちが報われるのであれば考えてほしい、そう告げるかなえちゃんの想いに胸を打たれた。

「……私でいいのかな」

 かなえちゃんの気持ちと、早坂の気持ち。
 2つの想いを知ってしまった私の口から零れたのは、消極的な本音。

 だって私は不倫してたのに。
 不貞行為を働くような最低な人間なのに。
 そんな女が、彼氏と別れた直後に今度は早坂と……なんて、そんなの早坂に失礼じゃないか。
 誠実じゃない。
 彼にはもっと相応しい人がいるはずだよ。

 そう訴えたけど。
 かなえちゃんは可笑しそうにくすくすと笑う。

「七瀬さんじゃなきゃダメなんですよ、あの人は」
「……かなえちゃん、どうしてそこまで一生懸命なの」
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