🕊 平和への願い 🕊 【新編集版】 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて。
14
「う~ん」
ミハイルを診察した医師は顔を歪めた。
感染症の可能性があるらしい。
しかし、菌を同定する検査ができない上に抗生剤の在庫が乏しいので、最適な抗生剤を投与することは困難だと首を振った。
「きちんと治療できる病院を紹介してください」
この病院以外に対応できるところはないと聞いてはいたが、それでもすがるような思いで詰め寄った。
しかし、医師は首を振るばかりだった。
「多くの病院が破壊され、医療関係者も殺されています」
医師の隣にいる看護師が辛そうな声を出した。
助けたくても助けられない現実に直面している彼女の顔が歪んだ。
それを見て、もうこれ以上彼らにすがることはできないと悟った。
状況は日に日に悪くなっているのだ。
それに、ミハイルよりももっと重症な人が少なからずいることを認めざるを得なかった。
「わかりました。トルコに連れて帰ります」
ない袖は振れないと言う医師をなんとか口説き落として抗生剤を3日分処方してもらったあと、ミハイルを車に運び込んだ。
そして、水と食料を少しでもいいから分けてもらえないかと看護師に懇願した。
しかし、良い返事はもらえなかった。
ギリギリで回しているので余分なものは何も無いという。
それでも手を合わせて頼むと、困惑した表情のままどこかへ向かった。
少しして戻ってきた彼女の手には小さな紙袋があった。
パンと水が入っているという。
お礼を言って受け取ろうとすると、彼女のお腹が鳴った。
彼女は恥ずかしそうに俯いたが、空腹のまま仕事をしているだろうことは容易に想像できた。
もしかしたらこれは彼女が今日口にする唯一の食事かもしれないと思うと、素直に受け取れなくなった。
「無理言ってすみませんでした」
頭を下げて、運転席側に回り、ドアを開けてシートに腰を落とした。
すると、太腿の上に紙袋が置かれた。
返そうとすると押し返された。
それでも返そうとすると、「幸運を祈っています」と言って顎の下で両手を組んだ。
その姿には深い慈しみが溢れており、何も言えなくなった。
ハンドルに押し付けるように頭を下げて嗚咽を堪えた。
それでも、「さあ、早く」という彼女の声と共にドアを閉められると、いつまでも感傷に浸っているわけにはいかなくなった。
顔を上げて、アクセルを静かに踏み込んだ。
バックミラーには手を振る姿が映っていた。
それは病院の敷地を出るまで続いた。
それを見ていると、何度も熱いものが体の奥から込み上げてきたが、必死になって堪えて車を前に進めた。
門を出てその姿が見えなくなると、強い気持ちが沸き起こってきた。
それは、今度は自分がパンと水と医薬品を持って助けに来なければならないというものだった。
絶対に実行すると誓って、モルドバへ向かった。
「う~ん」
ミハイルを診察した医師は顔を歪めた。
感染症の可能性があるらしい。
しかし、菌を同定する検査ができない上に抗生剤の在庫が乏しいので、最適な抗生剤を投与することは困難だと首を振った。
「きちんと治療できる病院を紹介してください」
この病院以外に対応できるところはないと聞いてはいたが、それでもすがるような思いで詰め寄った。
しかし、医師は首を振るばかりだった。
「多くの病院が破壊され、医療関係者も殺されています」
医師の隣にいる看護師が辛そうな声を出した。
助けたくても助けられない現実に直面している彼女の顔が歪んだ。
それを見て、もうこれ以上彼らにすがることはできないと悟った。
状況は日に日に悪くなっているのだ。
それに、ミハイルよりももっと重症な人が少なからずいることを認めざるを得なかった。
「わかりました。トルコに連れて帰ります」
ない袖は振れないと言う医師をなんとか口説き落として抗生剤を3日分処方してもらったあと、ミハイルを車に運び込んだ。
そして、水と食料を少しでもいいから分けてもらえないかと看護師に懇願した。
しかし、良い返事はもらえなかった。
ギリギリで回しているので余分なものは何も無いという。
それでも手を合わせて頼むと、困惑した表情のままどこかへ向かった。
少しして戻ってきた彼女の手には小さな紙袋があった。
パンと水が入っているという。
お礼を言って受け取ろうとすると、彼女のお腹が鳴った。
彼女は恥ずかしそうに俯いたが、空腹のまま仕事をしているだろうことは容易に想像できた。
もしかしたらこれは彼女が今日口にする唯一の食事かもしれないと思うと、素直に受け取れなくなった。
「無理言ってすみませんでした」
頭を下げて、運転席側に回り、ドアを開けてシートに腰を落とした。
すると、太腿の上に紙袋が置かれた。
返そうとすると押し返された。
それでも返そうとすると、「幸運を祈っています」と言って顎の下で両手を組んだ。
その姿には深い慈しみが溢れており、何も言えなくなった。
ハンドルに押し付けるように頭を下げて嗚咽を堪えた。
それでも、「さあ、早く」という彼女の声と共にドアを閉められると、いつまでも感傷に浸っているわけにはいかなくなった。
顔を上げて、アクセルを静かに踏み込んだ。
バックミラーには手を振る姿が映っていた。
それは病院の敷地を出るまで続いた。
それを見ていると、何度も熱いものが体の奥から込み上げてきたが、必死になって堪えて車を前に進めた。
門を出てその姿が見えなくなると、強い気持ちが沸き起こってきた。
それは、今度は自分がパンと水と医薬品を持って助けに来なければならないというものだった。
絶対に実行すると誓って、モルドバへ向かった。