🕊 平和への願い 🕊 【新編集版】  『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて。
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 深い森の中に濃い(もや)が立ち込めていた。
 静寂が支配し、生き物の気配は感じられなかった。
 葉音すら聞こえなかった。

 突然、音が響いた。
 甲高い音だった。
 その音に導かれるように靄が動き出し、モーセが海を開いたように一本の道が現れた。
 その道の先に草むらがあり、そこに小さな体が横たわっていた。
 生まれたばかりだろうか、裸の赤ん坊が泣いていた。
 その傍には白い髭を長く伸ばした老人が立っていた。
 その人はしばらく赤ん坊を見つめていたが、あやすためか、腰を落として手を差しのべた。
 抱き上げると、その子に向かって語り始めた。

「赤子よ、父と同じウラジミールという名を持つ赤子よ、今から話すことをよく聞きなさい。例えそれがどんなものであろうと耳を背けてはなりません。なにしろ、今から話すのはお前の人生そのものだからです」

 すると、赤ん坊は泣き止み、小さな両の手を伸ばして老人の(ひげ)に触れた。
 その途端、愛らしい笑みがこぼれた。
 両頬にはえくぼが浮かんでいた。

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