🕊 平和への願い 🕊 【新編集版】  『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて。
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 しかし、ワクチンと治療薬が開発されると状況が一変した。
 経済活動再開に伴って原油価格が上昇を始めたのだ。
 更に、西欧諸国による化石燃料依存度低下策が思わぬ幸運を呼び込んだ。
 アメリカが増産を渋ったのだ。
 シェール革命によって世界一の原油生産国となったアメリカが増産すれば一気に原油価格に影響を及ぼすが、そうはならなかった。
 化石燃料の先行きが不透明な中、積極的な投資を行う事業者はほとんどいなかったのだ。

 ロシアを含め産油国はこれで一息つくことができた。
 高値安定はウエルカム以外の何物でもなかった。
 だから、消費国よる増産要請にも正面から応えることはなかった。
 微増という妙案で切り抜けたのだ。
 それによって2021年に入ると1バレル50ドルを突破し、その後も上がり続けて年央には75ドルラインに届くようになった。
 産油国は大いに潤うようになったのだ。
 ロシアの外貨準備高も急増し、年末には6,300億ドルを超えた。
 73兆円という途轍もない額に積み上がったのだ。
 この状況がお前の背中を押した。
 悲願である民族統一に踏み出すことを決めたのだ。

 その前振りは7月に発表した論文にあった。
『ロシア人とウクライナ人の歴史的統一性』だ。
 その内容は、ロシア人とウクライナ人は一つの民族であり長い間単一の国家を形成していたという歴史があるにも拘らず、西側諸国の影響を受けてロシアに対抗する姿勢を鮮明にしたこと、ウクライナのネオナチがクリミアやドンバスでロシア系住民を蹂躙(じゅうりん)したこと、更に、EUやNATOへの加盟を目論んでおり到底許せるものではないといったものだった。
 ソ連邦崩壊後、迫りくる西側諸国の拡大に警鐘を鳴らしたのだ。
 そこにはロシアを正当に認めてくれないという積年の恨みと共に、これ以上危険なゲームを進めるのなら容赦はしないという警告が込められていた。
 
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