🕊 平和への願い 🕊 【新編集版】  『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて。
『特別軍事作戦』と名付けた侵攻は東部ドンバス地方にとどまらず首都キエフもターゲットとした。
 特殊部隊を投入することによって、ネオナチの首謀者とみるゼレンスキー大統領の首を狙ったのだ。
 一気に体制を崩壊させて傀儡(かいらい)政権を樹立するのが目的だった。
 しかし、それは失敗に終わった。
 大統領府の堅い守りに阻まれて彼に近づくことさえできなかった。

 作戦の失敗を受けて、ベラルーシに派遣していた部隊に進軍を命じた。
 一気呵成(いっきかせい)にキエフを攻め落とそうとしたのだ。
 しかし、順調だったのはチェルノブイリ原発を占領するまでだった。
 圧倒的な戦力の差によって短期間でキエフを制圧できると踏んでいたが、目論見(もくろみ)通りにはいかなかった。
 予想以上の反撃にあったこともあるが、それ以上にロシア軍の統制が取れていないことが大きかった。
 笛吹けど踊らずの状態が続いたのだ。

 それに業を煮やしたお前は部隊の司令官を前線に送り込んだが、これが裏目に出た。
 次々に殺害されてしまったのだ。
 それは、ウクライナ軍に協力した民間人によるドローン情報に加えて、西側諸国から提供された情報が狙撃の確率を高めていたことによるものだった。
 米軍の空中警戒管制機(AWACS)やイギリス軍の電子偵察機によってロシア軍の動きをリアルタイムに掴まれるだけでなく、それがウクライナ軍に共有されて反撃に使われていた。
 アメリカから提供された携帯型対戦車ミサイル『ジャベリン』や携帯型対空ミサイル『スティンガー』によって進撃を止められてしまったのだ。

 そこで、キエフ制圧が難しいと判断したお前は、態勢を立て直して東部への攻撃に集中することにした。
 それは5月9日の対ドイツ戦勝記念日に勝利宣言をするためだった。
 そのためにはなんとしても東部2州の制圧が必要だった。
 お前は迷わずドゥボルニコフを司令官に任命した。
『シリアの虐殺者』と異名をとる彼の手腕に期待したのだ。
 そして、すぐさまアゾフスターリ製鉄所に立てこもって抵抗を続ける憎きアゾフ大隊をせん滅せよと命じた。
 彼らこそお前にとってのネオナチだからだ。
 この戦争の大義を立てるためにも彼らを一掃する必要があった。
 しかし、簡単にはいかなかった。
 核攻撃にも絶えられるほどの頑強な地下設備を破壊することはできなかった。
 そのため、5月9日の勝利宣言は諦めざるを得なくなった。

< 95 / 102 >

この作品をシェア

pagetop