深瀬くんが甘すぎる
「いらっしゃいませ、本日は足をお運びいただきありがとうございます。私、この呉服屋の店主の妻の小百合と申します」
入り口で丁寧に腰をおって挨拶してくれるさゆりさんについて中に入る。
すぐに店内の着物を見て回るお姉ちゃんとは対照的に、私は店の端で小さくなった。
そもそも今日は姉が着物を選びにきただけで、私は付き添いだ。でしゃばる幕はない。
「初めまして、私は小百合と申します。よろしければお名前をお伺いしても?」
「あ、八代ひまりです。よろしくお願いします」
そう思っていたのに、小百合さんに話しかけられた。