深瀬くんが甘すぎる
「初めまして、小百合の息子の深瀬伊織です。店内を案内させていただいてもーーー」
柔和な笑顔と、柔らかな声。
だけどその表情は、私を視界に入れた瞬間に固まった。
私もその名前と顔を認識して、絶句する。
焦茶色の柔らかな髪に涼やかな目元。
いつもたくさんつけているアクセサリー類は一つもなくて、いかにも好青年という見た目でそこに立っていたのは…あの、深瀬くんだった。
「…なんで」
2人して固まる私たちに、小百合さんが不思議そうに首を傾げる。
「…ひまりさん、伊織と知り合いなの?」
「…えっと……」
知り合い、といってもいいのだろうか。初日以来、ほとんど話したこともないのに?
少し迷って深瀬くんの方に顔を向ける。
彼は小難しい顔をして、少し考え込んでいるようだった。