深瀬くんが甘すぎる

「まあ、まさかひまりさんが伊織の言っていた彼女さんだなんて思わなくて、ごめんなさいね。改めまして、伊織の母の深瀬小百合です。よろしくお願いね」

「八代ひまりです。えっと…彼にはいつも良くしてもらってます。こちらこそよろしくお願いします」

丁寧に腰を折る小百合さんに、あわてて私も改めて挨拶をする。

深瀬くんって呼ぶのはよそよそしすぎるし、かと言って名前を呼ぶのも気恥ずかしい。

迷った末、結局そこは曖昧にぼかすことにした。

「じゃあ、私は他の方に声をおかけしているから、伊織はひまりさんをよろしくね」

ゆったりと優しい笑みを浮かべてその場を離れる小百合さんを見送って、その背が遠くなってからゆっくりと息をついた。
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