騙すなら墓場まで



「土門さん……」

「得留さんに説得されたんです。本当にこのままで良いのかと」

「……あなたは正しいことをした、それだけです」

「お嬢様を地獄に突き落とすと知りながら?」


 私は彼の目を見た。眼鏡の奥では光のない黒目が私を貫こうとしている。


「地獄に突き落とされたのは、被害者の人たちです」


 土門さんの顔が歪む。今にも泣き出しそうな顔をして下を向いてしまった。


「あなたは私やお父さんを見捨てて逃げ出したんじゃない。苦しむ人たちを救おうとしているだけです」

「申し訳ありません……!」


 深々と頭を下げる土門さんに、私は慌てて頭を上げるよう言った。それでもずっと謝罪を繰り返し、他の社員が彼を別室に連れていくまで嗚咽が響いていた。

 土門さんとはそれきりになってしまい、この一年は連絡も何もしなかった。私やお父さんを忘れて、正しく生きてほしいと思っていたからだ。


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