騙すなら墓場まで
 


 伊月さんの顔が浮かんだ。相談したところで却下されるか、そもそも話し合ってもくれないかもしれない。


 何より伊月さんを煩わせたくない。


 私は受話器を握り直して深呼吸をした。


「土門さんに伝えて、明日にでも会おうって」

「……わかった。すぐ伝える」


 萩野さんは本当にすぐ伝えてくれた。いったん保留になったと思ったら、電話先に土門さんが出たときは心臓が比喩ではなく止まりかけた。


「土門さん、お久しぶりです」

「お嬢様、お久しぶりです」

「もうお嬢様じゃないでしょ」


 私が失笑すると、「お元気そうで良かった」と涙声が伝わってきた。


「それでその、お話しというのは?」

「申し訳ありません、直に会ってお話ししたいんです」

「……そうですか」


 ダメ元で聞いてみたけど、やっぱり土門さんは話してくれなかった。会わないと話せないようなことって何なんだろう。良いことなのか悪いことなのか、それだけでも教えてもらいたい。


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