騙すなら墓場まで
ただの昔話──Side 伊月
俺の両親は、善良な普通の人だった。
誰かが酷い目に遭えば胸を痛め、誰かが喜べば一緒に喜ぶような、そんな思いやりに溢れた普通の人。
そんな両親のことが俺は大好きだったけど、同時に不安でもあった。
ほら、良く言うだろ。善人ほどカモにされるって。
現実でも創作でも、理不尽な事件に巻き込まれる人たちを大勢見てきた。
でも心のどこかで思ってたんだ。うちの家族に限って、そんな悲惨な運命が待っているはずないって。
そしてその日は唐突に訪れた。
白い布を被せられた父母と対面した瞬間、自分の中で何かが壊れる音を聞いた。
──すぐ良くなるからね
やつれた両親は確かにそう言って、俺は何と応えたのだっけ。
病院へ向かう途中、極度の疲れから自動車事故を起こしたと知り、どうしてそんなことになったのかをこっそり調べた。
引き取ってくれた養父母は、頑なに教えてくれなかったから。