離婚した元旦那様、恥ずかしいので心の中でだけ私を溺愛するのはやめてください、全て聞こえています。
☆☆☆
いつも通り、離れにやってきた湊斗は、朧の姿が見えないことに、首を捻っていた。
離れを一通り探し回って、居間に戻ってきたとき、玄関が引き開けられる音がした。
《朧……?》
湊斗が振り返った次の瞬間、頭から布を被った黒ずくめの人影が、湊斗に体当たりしてきた。
「ぐっ……?」
腹に衝撃が走り、次にかっと熱を持った。
湊斗は表情を歪める。
力任せに黒ずくめの人物を押し退けると、腹にめり込んだ物体に恐る恐る手を触れる。
ぬるっとした感触があり、とたんに激痛が走る。
黒ずくめの人物は、さっと身を翻すと、離れを走り去っていった。
力が入らず、崩れるように湊斗は畳の上に倒れ込んだ。
目の前が暗くなり、手足が冷えてしびれてくる。
荒い呼吸の間に、湊斗は朧の名を呟いた。
愛しい、愛しい彼女の名を。
じわじわと、着物に黒い染みが広がり、真新しい畳をも侵食し始めた。
激痛にうめきながら、湊斗はゆっくり意識を失っていった。
☆☆☆
離れを大掃除するから、とみゆきに言われ、龍ケ崎の敷地にある蔵に身を隠していた朧は、日が沈んでしばらくしてから、離れに帰り、玄関を開けた。
草履を脱いで居間へ向かうと、飛び込んできた光景に、朧は息を呑んだ。
次いで、形にならない悲鳴が喉から無意識に溢れ出す。
「湊斗さん!?湊斗さん!」
居間の畳の上に、湊斗が倒れていた。
腹部から流れ出た血液が、湊斗の灰色の着物を黒く染め、畳にも血が染み込んでいる。
湊斗の腹には、短刀が突き刺さっていた。
思わず駆け寄り、短刀を引き抜こうとした、そのときだった。
空間を引き裂く悲鳴が、背後で上がった。
振り返ると、みゆきが口元を押さえて蒼白になっていた。
「みゆきさん、湊斗さんが……」
頭を恐怖に支配され、思考停止に陥っていた朧が、すがるようにみゆきを呼ぶと、複数の足音が離れに近づいてきた。
「湊斗!
まあ、なんてことなの!」
富子が目を見開いて、玄関先に立ち尽くす。
続いて定国が、理性を失ったような怒鳴り声を上げる。
「どうした、何があった!?
朧さん、何であんたがここにいるんだ、湊斗に何をした!」
「わ、わたしは何も……」
朧が動転したまま言葉を継ごうとすると、みゆきが遮るように叫んだ。
「私、見ました!
朧さんが旦那様を刺しているところを!」
「みゆきさん!?
ち、違います、わたしは何もしていません!
わたしが来たときには、もう……」
いつも通り、離れにやってきた湊斗は、朧の姿が見えないことに、首を捻っていた。
離れを一通り探し回って、居間に戻ってきたとき、玄関が引き開けられる音がした。
《朧……?》
湊斗が振り返った次の瞬間、頭から布を被った黒ずくめの人影が、湊斗に体当たりしてきた。
「ぐっ……?」
腹に衝撃が走り、次にかっと熱を持った。
湊斗は表情を歪める。
力任せに黒ずくめの人物を押し退けると、腹にめり込んだ物体に恐る恐る手を触れる。
ぬるっとした感触があり、とたんに激痛が走る。
黒ずくめの人物は、さっと身を翻すと、離れを走り去っていった。
力が入らず、崩れるように湊斗は畳の上に倒れ込んだ。
目の前が暗くなり、手足が冷えてしびれてくる。
荒い呼吸の間に、湊斗は朧の名を呟いた。
愛しい、愛しい彼女の名を。
じわじわと、着物に黒い染みが広がり、真新しい畳をも侵食し始めた。
激痛にうめきながら、湊斗はゆっくり意識を失っていった。
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離れを大掃除するから、とみゆきに言われ、龍ケ崎の敷地にある蔵に身を隠していた朧は、日が沈んでしばらくしてから、離れに帰り、玄関を開けた。
草履を脱いで居間へ向かうと、飛び込んできた光景に、朧は息を呑んだ。
次いで、形にならない悲鳴が喉から無意識に溢れ出す。
「湊斗さん!?湊斗さん!」
居間の畳の上に、湊斗が倒れていた。
腹部から流れ出た血液が、湊斗の灰色の着物を黒く染め、畳にも血が染み込んでいる。
湊斗の腹には、短刀が突き刺さっていた。
思わず駆け寄り、短刀を引き抜こうとした、そのときだった。
空間を引き裂く悲鳴が、背後で上がった。
振り返ると、みゆきが口元を押さえて蒼白になっていた。
「みゆきさん、湊斗さんが……」
頭を恐怖に支配され、思考停止に陥っていた朧が、すがるようにみゆきを呼ぶと、複数の足音が離れに近づいてきた。
「湊斗!
まあ、なんてことなの!」
富子が目を見開いて、玄関先に立ち尽くす。
続いて定国が、理性を失ったような怒鳴り声を上げる。
「どうした、何があった!?
朧さん、何であんたがここにいるんだ、湊斗に何をした!」
「わ、わたしは何も……」
朧が動転したまま言葉を継ごうとすると、みゆきが遮るように叫んだ。
「私、見ました!
朧さんが旦那様を刺しているところを!」
「みゆきさん!?
ち、違います、わたしは何もしていません!
わたしが来たときには、もう……」