神に選ばれなかった者達 後編
薄暗い部屋の中は、驚くほど物がなかった。
床には絨毯も敷いてないし、壁面にも窓が一枚もない。
その割には天井が高くて、エアコンが行き届いているのか、部屋の中は震えるほど寒かった。
そして、殺風景なこの部屋の中にあるのは、一つだけ。
卵型の、透明なガラス張りの培養カプセル。
これだけだった。
「…何なの…?これ…」
「…」
みらくちゃんは、響也君の背中にぴったりくっついたまま、怯えていた。
萌音ちゃんは、興味深そうにきょろきょろしていた。
…まぁ、みらくちゃんが怯えるのは分かる。
何だろう。上手く言えないけど。
この部屋、凄く不気味だ。
これまでのどのフロアとも違う…とても病院とは思えない、異質な場所だった。
ここがラスボス部屋…?
「あの…ふぁにさん」
恐る恐るといった風に、のぞみちゃんが声をかけてきた。
「何?」
「何か見えますか…?その…バケモノ、とか…」
「あぁ、うーん…」
ちょっと待ってよ。
ふぁには、ぐるっと部屋の隅々まで確認した。
…けれど…。
…そうだな。なんて言ったら良いかな。
「…バケモノはいるよ」
「えっ」
ふぁにの返事に、のぞみちゃんが青ざめ。
「何処に?」
そんなのぞみちゃんを庇うように前に出たいそら君は、殺気を放ちながら鉄パイプを構えた。
あぁ、ごめん。
ちょっと言葉を…言い方を間違えた。
「大丈夫。すぐには襲われないと思うよ」
「で、でも、バケモノがいるんですよね?」
「うん、いる。それは間違いない…。…けど」
「…けど?」
ふぁには、部屋の中にある唯一の物体…卵型の培養カプセルを指差した。
「そこだよ。バケモノがいるのは」
「…!?嘘…」
「嘘じゃあない」
見えちゃったんだよ。…無駄に目が良いせいで。
「これ、バケモノがいるの?」
相変わらず恐れ知らずの萌音ちゃんは、躊躇なくカプセルに近寄った。
「ちょっ…萌音、無警戒過ぎるぞ。いきなり襲われたらどうするんだよ」
そんな萌音ちゃんを、李優君は慌てて止めたが。
「こんこん。元気ですかー?」
萌音ちゃんは制止も聞かず、カプセルをこんこんとノック。
おいおい。
もしこれで、カプセルの中のバケモノが目を覚まして、「ぐぉぉぉ!」とか言って暴れ出し、カプセルをぶち破ったら。
それこそ、いよいよ最終決戦が始まりそうだったが…。
「…」
どれだけ待っても、カプセルの「中身」が動き出すことはなかった。
…痛い思いしなくて良かったのかもしれないが、何も無いと何も無いで、それはまた別の不安があるな。
床には絨毯も敷いてないし、壁面にも窓が一枚もない。
その割には天井が高くて、エアコンが行き届いているのか、部屋の中は震えるほど寒かった。
そして、殺風景なこの部屋の中にあるのは、一つだけ。
卵型の、透明なガラス張りの培養カプセル。
これだけだった。
「…何なの…?これ…」
「…」
みらくちゃんは、響也君の背中にぴったりくっついたまま、怯えていた。
萌音ちゃんは、興味深そうにきょろきょろしていた。
…まぁ、みらくちゃんが怯えるのは分かる。
何だろう。上手く言えないけど。
この部屋、凄く不気味だ。
これまでのどのフロアとも違う…とても病院とは思えない、異質な場所だった。
ここがラスボス部屋…?
「あの…ふぁにさん」
恐る恐るといった風に、のぞみちゃんが声をかけてきた。
「何?」
「何か見えますか…?その…バケモノ、とか…」
「あぁ、うーん…」
ちょっと待ってよ。
ふぁには、ぐるっと部屋の隅々まで確認した。
…けれど…。
…そうだな。なんて言ったら良いかな。
「…バケモノはいるよ」
「えっ」
ふぁにの返事に、のぞみちゃんが青ざめ。
「何処に?」
そんなのぞみちゃんを庇うように前に出たいそら君は、殺気を放ちながら鉄パイプを構えた。
あぁ、ごめん。
ちょっと言葉を…言い方を間違えた。
「大丈夫。すぐには襲われないと思うよ」
「で、でも、バケモノがいるんですよね?」
「うん、いる。それは間違いない…。…けど」
「…けど?」
ふぁには、部屋の中にある唯一の物体…卵型の培養カプセルを指差した。
「そこだよ。バケモノがいるのは」
「…!?嘘…」
「嘘じゃあない」
見えちゃったんだよ。…無駄に目が良いせいで。
「これ、バケモノがいるの?」
相変わらず恐れ知らずの萌音ちゃんは、躊躇なくカプセルに近寄った。
「ちょっ…萌音、無警戒過ぎるぞ。いきなり襲われたらどうするんだよ」
そんな萌音ちゃんを、李優君は慌てて止めたが。
「こんこん。元気ですかー?」
萌音ちゃんは制止も聞かず、カプセルをこんこんとノック。
おいおい。
もしこれで、カプセルの中のバケモノが目を覚まして、「ぐぉぉぉ!」とか言って暴れ出し、カプセルをぶち破ったら。
それこそ、いよいよ最終決戦が始まりそうだったが…。
「…」
どれだけ待っても、カプセルの「中身」が動き出すことはなかった。
…痛い思いしなくて良かったのかもしれないが、何も無いと何も無いで、それはまた別の不安があるな。