神に選ばれなかった者達 後編
「…ともあれ」

と、妹尾ふぁにが言った。

「残りの二人のメンバーを探しに行くか、それとも自分らでうご、」

「あ、危ない!!」

まず、空音のぞみが叫び。

「のぞみ!」

空音いそらが、妹ののぞみを庇い。

「きゃっ…」

俺の近くに居たみらくを、俺は身体を覆って庇うように、床に伏せ。

「っ、ぶなっ…!!」

妹尾ふぁには、間一髪のところでその場にしゃがみ込んで、「それ」を躱した。

すると、そこに。

「ちょ、ばっ、萌音!あれは味方だ!」

「ふぇ?」

「ふぇ、じゃなくて…!」

…この声は。

俺はみらくの上から退いて、顔を上げた。

そこには、思った通りの人物が居た。

何か巨大なものを投擲した後のようなモーションをした、久留衣萌音と。

焦った表情の、佐乱李優がいた。

…あぁ、やっぱりあの二人だった。

そして、俺の背後の壁を見ると。

人間の背丈の三倍くらいは余裕にある、巨大な人型の彫刻が。

上半身をずぶっ、壁にめり込ませ、下半身だけが無様に突き刺さっていた。

どうやら、久留衣萌音がこれをぶん投げたらしい。

もし当たっていたら、恐らく即死だっただろうな。

危ないところだった。

「大丈夫か?みらく…」

「う、うん…」

俺は、みらくを助け起こした。

どうやら、咄嗟に床に伏せたお陰で、怪我はなかったようだ。

不幸中の幸いと言うところだな。

更に。

「あぶねー…。死ぬかと思った…」

妹尾ふぁには、目を白黒させながら立ち上がった。

そして。

「のぞみ、大丈夫?怪我はない?」

「う、うん。お兄ちゃんは…?」

「お兄ちゃんは大丈夫だよ」

空音兄妹も、何とか無事だったようだ。

最近夢の中の体験のせいで、やたら反射神経が良くなっているような気がする。

これなら、車が歩道に突っ込んできても避けられるかもしれない。

すると。

「お前達…っ!大丈夫か!?」

佐乱李優が血相を変えて、こちらに走ってきた。

「あぁ…。お前も無事だったか」

図らずも、これで七人全員が揃ったな。

「ごめん、お前達がいるとは思わなかったんだ…!」

めちゃくちゃ焦って謝ってくる李優。

別にこちらは怪我をしてないから、そんなに気にしなくて良いぞ。

仮にぶん投げた彫刻に当たって死んでいても…いや、死ぬのは嫌だが…。

バケモノに殺されるよりはマシ、というものだ。
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