神に選ばれなかった者達 後編
「わー。ごめんねー、皆」

久留衣萌音が、こちらにとてとて、と走ってきた。

「顔がいっぱいあったから、敵かなと思って、つい投げちゃった」

つい投げちゃった、感覚で人間×3の大きさの彫刻を投げるとは。

さすが、生贄メンバー1の怪力の持ち主。

「だから、敵かどうかよく見てから攻撃しろって言っただろ!」

「…しゅーん…」

…怒られてる。

つくづく敵に回したくない仲間だ。

「ま、まぁまぁ…良いじゃないですか」

と、空音のぞみが二人を宥めた。

「皆無事だったんだし…。…それに、今は全員が合流出来たことを喜びましょう」

「そうだな。あんたさんら二人が来てくれたお陰で、全員揃ったよ」

空音のぞみと、妹尾ふぁにが言った。

「だって、李優。皆揃ったよ。わーい」

「わーい、じゃなくてな…」

「七人揃えば呪文の杖、って言うもんね」

「…言わねーよ…」

多分だが、それを言うなら。

三人寄れば文殊の知恵、だな。

だがまぁ、三人よりは七人の方が心強いのは確かだ。

「やれやれ…。…ったく。それじゃ、また皆で探索していくか…」

「おー」

何だか、宝島の冒険にでも出掛けるような気軽さだな。

…その方が良いだろう。

これから先に待っているのはどうせ、痛みや苦しみや、絶望ばかりなのだから。

せめて笑える時は、笑って過ごした方が良い。

「…行こう、みらく」

「うん」

手を差し出すと、みらくが俺の手をぎゅっ、と握った。

はみ出し者同士、花一匁の最後の一人だとしても。

俺達はこうして生きている。生きて、戦っている。

どうか、そのことを覚えていて欲しい。

世界中の誰もが、間抜けヅラを晒して、素敵な夢を見ているその間。

俺達のような「神に選ばれなかった者達」が、今も毎晩、苦痛に呻きながら戦っている。

今夜もまた、必死に夢の中で足掻き、藻掻き…懸命に生きようとしているのだということを。












負けて悔しい花一匁Ⅴ END



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