お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語
「あっ、BON BONの方?」


眉間にシワを寄せ、困った顔を少し傾けて俺を見る。


「あははー、そうきたか! まあ、それも却下だね。​普通に名前でいいよ。俺も『花村さん』ではなく、『美愛ちゃん』って呼ぶから。なんだか大和が言っていた意味がわかった」


キョトンと目を丸くした花村さん--美愛ちゃんには、きっと俺が笑っている意味はわからないだろうな。


「えっ? 私、何かしてしまいましたか?」

「何もしていないよ。美愛ちゃんはそのままで大丈夫だよ。ところで、俺の名前を知ってるよね?」

「……は、はい」

「呼んでみてよ」

「えっ? い、今ですか?」

「うん、今ね。」


いたずらっ子のように、にっこりとした笑顔を浮かべた。美愛ちゃんは恥ずかしそうに視線を逸らし、小声でつぶやく。


「……み、雅さん」

「うん、よくできました」


ほんのり桜色に頬を染め、恥ずかしそうに視線を逸らした彼女を見て、俺は満足そうにうなずいた。




ケーキワゴンが到着し、お互いに好きなものを選ぶ。定番のケーキに加え、今シーズンのメインには、夏の果物を使ったスイーツがある。

メロンのショートケーキと黒い森のケーキ、パイナップル・アップサイドダウンケーキ、ブルーベリータルトとスイカのグラニテ、そして、丸ごと桃のカスタードタルト。スイカのグラニテはタブレットで注文し、持ってきてもらう。

俺はパイナップルケーキを、美愛ちゃんは桃のタルトを選んだ。

丸ごとの桃を器用にフォークとナイフで切り分け、一口頬張る彼女。大きく目を見開き、満面の笑みを見て、思わず微笑んだ。


「どうやら美愛ちゃんはその桃のタルトを気に入ったようだね」
< 29 / 138 >

この作品をシェア

pagetop