お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語
「み、雅さん、すごいです! これ、すごいです。お口の中が、桃の滝でいっぱいになりました!」


嬉しそうに顔をほころばせる彼女を見て、誘った甲斐があったと思った。


「あははは、そうか。俺も食べてみないと」


あれ? この子、本当に笑うとエクボができるんだ


その後、ゆったりと何気ない会話を楽しみながら、なんと全種類を制覇した。

最後はお勧めのコーヒーでくつろいでいると、突然ドアがノックされた。入ってきたのは、九条仁。

高身長で、チャコールグレーのスーツを着こなす仁は、上品で華やかな顔立ちをしているが、裏では口が悪い。まあ、そこが人間味があっていい。

どうやら、今シーズンの感想を聞きに来たようだ。


「よっ、どうだった?」

「全部美味しかったよ。特に丸ごとの桃が良かった」


そう言って、桃を気に入ってた美愛ちゃんを笑顔で見た。


「そう言ってもらえて嬉しいよ。ところで、こちらのお嬢さんは?」

「紹介するよ。うちに来てくれた新しい秘書の花村さん」


美愛ちゃんはスッと席を立ち、緊張しながら挨拶をする。


「は、は、はじめまして。花村美愛と申します」

「はじめまして。ホテル9(クー)のオーナーで、コイツの親友の一人、九条仁です。まあ、そんなに硬くならないで。せっかく来てくれたんだから、ゆっくりしていって」

「ありがとうございます」


仁は俺の隣の空いている席に座り、少し世間話をし始める。

俺たちの話の邪魔をしないように、彼女は少しぼんやりしながら窓の外を眺めている。先ほどの余韻に浸っているようだった。

突然、夢心地の美愛ちゃんから独り言が漏れ始める。


「あ〜、おいしかったなぁ。全部美味しかったけど、イチオシは桃ちゃんだねぇ。もうお腹いっぱい。これ以上食べたら死んじゃう
よー。でもおいしかったから、死んじゃってもいいかなぁ? う〜ん、やっぱりまだ死にたくないや。来年もまた桃ちゃんに会いたいから、まだ生きていよう。はぁー、夢の国へ行った時と同じくらい幸せ。私のお腹も幸せって言ってるし……」
< 30 / 138 >

この作品をシェア

pagetop