お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
「それなら、私も参加させていただきます。今、父に連絡してもよろしいかしら?」


圭衣ちゃんはその場でジョセフさんに電話をかけ、ドイツ語で簡潔に状況を伝えた。

通話を終えると、こちらに向き直る。

ジョセフさんは、佐藤麻茉の件に強い怒りを示しているらしい。証拠が揃い次第、被害届を提出し、訴訟は涼介に一任するとのこと。
もちろん三光銀行とは、全面的に関係を断つ。


「……そもそも、あのカッパおやじとチビたぬき、どちらも気に入らなかったのよね」


……は?

一瞬、耳を疑った。クールビューティーの圭衣ちゃんが、今なんて言った? 俺たちは、思わず目を見合わせた。

当の本人はというと、はっとして口元を押さえている。


「あっ……言葉遣い」


一瞬だけ間を置いて、ふっと肩の力を抜く。


「……もういいわよね、素で。母さまにバレなければ問題ないわ」


俺と涼介は、顔を見合わせた。誰のことを言っているのか、まったくわからない。一方で、大和だけが肩を震わせて笑いを堪えている。

その様子に気づいた圭衣ちゃんが、軽くため息をついた。


「ミッドタウン支店長が『カッパ』。三光銀行の会長が『チビたぬき』よ」


淡々とした口調で続ける。


「カッパは、頭頂部が禿げていて、自分より弱い相手を見下すタイプ。チビたぬきは……そのままね」

ーーなるほど。

そのとき、初めて知った。三光銀行の会長が、孫息子と美愛ちゃんを見合いさせようとしていたことを。


「美愛ちゃんが大学生の頃の話よ」


圭衣ちゃんが吐き捨てるように言う。


「もちろん、父さまが即座に潰したけど」


大和が口を挟んだ。


「確か、その孫息子って評判良くないよね。かなり遊んでるって聞いたけど」

「ええ。25歳、無職。金髪にピアス」


圭衣ちゃんは、深く息を吐いた。


「……本当に、ろくでもないわ」


そして、ふと表情を引き締める。


「もう一つ、お話ししたいことがあります」


声のトーンが変わる。


「これは個人的な話になるのですが……西園寺社長」

「構わない。この二人の前でも問題ない。何でも答える」


圭衣ちゃんは、しばらく俺をじっと見つめた。その視線はまっすぐで、一切の曖昧さがない。やがて、静かに口を開く。


「あなたは、美愛ちゃんのことをどう思っているの?」


一瞬、妙な静寂が漂った。


「ただの社員?」


さらに一歩、圭衣ちゃんが踏み込む。


「それともーーそれ以上の感情。つまり、恋愛感情があるの?」
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