せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 そんな私達に目を向けることもなく、オーバル子爵はため息をついた。そのため息は、演技とは思えない。本当に、心から出たものといった感じだ。

「この際だから言っておきますが、私はサジェードも抹殺の対象には含めていました。ただ、奴は当時屋敷にいなかったらしく……ああ、そういった意味では、メルーナ嬢と同じです」
「こちらが聞きたいのは、どちらかというとサジェードが事実を知っていたか、ということだ」
「知っていたと思いますよ。もちろん、確信があるという訳ではありませんがね。まあ、一応仕留めておきたい者でした。あの一家の性質を考えると、伝えている方がしっくりとくる」

 モルダン男爵家のことについては、オーバル子爵の方が私達よりもよく知っている。
 そんな彼がこう言っているのだから、サジェードは事実を知っていたと考えるべきだろう。
 となると、メルーナ嬢が訪ねて来た場合どうなるかは想像できる。考えたくはないが、最悪の場合は命さえ危ないかもしれない。
< 182 / 246 >

この作品をシェア

pagetop