せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
「兄上のことがあるから、モルダン男爵家のことを調べるのは簡単だ。こっちが少し手続きすれば、屋敷を丸ごと洗えるだろうさ」
「すぐにでもそうするべきでしょうね」
「ああ、もちろんだ。諸々の手続きの方はエルヴァンに頼んでいる」

 私とイルドラ殿下は、モルダン男爵家のサジェードへの疑惑を各所に伝えた後、客室で向き合って座っていた。
 モルダン男爵家は、アヴェルド殿下と癒着していた。当主と娘がオーバル子爵家の被害者となった訳だが、別にそれで罪が消えるという訳ではない。
 その罪に関して調べるという名目で、詳しい調査は可能である。これは私達にとって、とても幸いなことだ。

「手続きができ次第、俺達もモルダン男爵家の屋敷に向かうとしよう。もどかしいことではあるが、やっぱりその辺りを無視する訳にはいかないからな」
「……ですが、メルーナ嬢が心配です」
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