せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
「しかし今は待つしかない。そもそも俺達だけでモルダン男爵家の屋敷に行っても、何も調べられはしないだろうさ。無理やり調べたら、問題になるだけだ。だから、なんとか耐えてくれ」

 イルドラ殿下は、私の目を真っ直ぐに見つめてきていた。
 彼自身も、当然メルーナ嬢のことは心配なのだろう。その険しい表情からは、それが伝わってくる。
 もちろん私も、待つしかないということはわかっていない訳ではない。できるだけ早く、手続きが終わって欲しいものである。

「……イルドラ兄上、リルティア嬢、この部屋にいるのか!」
「……オルテッドか? どうしたんだ、そんなに慌てて……とにかく入っていいぞ」

 そんなことを話していると、部屋の戸が急に叩かれた。
 その直後に焦った様子で部屋に入って来たのは、オルテッド殿下である。彼の表情は、何か問題が起きたことを表している。
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