せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 私達が望んでいた通り、ウォーラン殿下は足止めを食らっていたようだった。
 それで使用人に追いつかれて、私達が来ることを知らされた。そこで彼はやっと、踏み止まる判断をしたのだろう。私達が程なくして来るのだから、わざわざ危険を犯す必要も、ないと思ったのかもしれない。

「それで兄上、きちんと許可は取れているのですよね?」
「きちんとは取れていないさ。お前が先走ったせいで、無理して取ったんだ」
「それはすみません。しかし、合法的にモルダン男爵家を調べられるのですね?」
「まあ、一応はそういうことになるが……」
「それならすぐに行きましょう」

 踏み止まったものの、ウォーラン殿下は完全に冷静という訳でもないようだった。
 それだけ、メルーナ嬢のことが心配なのだろう。その気持ちはわからない訳ではない。

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