せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
「悪いが、入らせてもらうぜ?」
「……イルドラ殿下、このような訪問は無礼であると思いませんか?」
「無礼と言われてもな。こちらには大義名分というものがある。モルダン男爵家は被害者でもあるが、兄上との癒着に関しては加害者側だ。それを忘れないでもらいたい」

 私達が訪ねると、サジェードはすぐに出てきた。
 彼は、焦ったような顔をしている。それは何かしら、やましいことがあるからだろう。
 それが、メルーナ嬢のことであるかはわからない。人に見られたくないものなんて、いくらでもある。彼が単純に、個人的な秘め事について焦っているだけかもしれない。

「しかしながら、こちらにも準備というものが……」
「準備をされたら、こちらは困るんだよ。ただでさえ、色々とあって調査が遅れてしまっているからな。そう考えると、既に準備なんてできているんじゃないか?」
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