せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 彼のその態度は、異常ともいえる。やはりここにメルーナ嬢がいる可能性は高そうだ。

「兄上、僕も行きます」
「ああ……」

 そんなサジェードを気にすることもなく、ウォーラン殿下は屋敷の奥の方に駆けて行った。
 弟を見送りながら、イルドラ殿下はサジェードを睨みつける。彼はここに残って、話を続けるつもりであるようだ。

「サジェード、何かやましいことがあるなら素直に打ち明けた方がいい。隠していてもいいことはないぞ?」
「ぼ、僕は別に何も……」
「認めないというなら、それでもいい。ただ、逃げられるなんて思わない方がいい。騎士達の調査は厳重だ。この屋敷の全てを暴くだろう」

 イルドラ殿下は、冷たい視線をサジェードに向けていた。
 それに彼は、ゆっくりと項垂れる。罪を告白するべきか、考えているのだろうか。
 しかし、中々に言葉は出てこなかった。どうやら彼には、そういった勇気はなかったようである。
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