せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
「……突然、訪ねて来る方が悪いんじゃないか」
「……何?」
「父上とシャルメラを悼みに来ただって、いきなりそんなことのために訪ねて来るなんて、無礼な話だ」

 イルドラ殿下の言葉を聞いたサジェードは、ゆっくりと言葉を呟き始めた。
 彼の目は据わっている。その表情に、私は息を呑む。どうやら彼は、追い詰められて少しおかしくなっているらしい。

「僕は悪くない!」
「サジェード、お前……」
「あの女が悪いんだ! 全てはあの女が僕を嵌めるために企てたことだ!」

 サジェードは激しい身振り手振りを交えて、叫び始めた。
 彼が追い詰められているということは、理解することができる。それでおかしくなったと、頭ではわかっている。
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