せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 メルーナ嬢やウォーラン殿下にも、そうやって支えてくれる存在が必要であるだろう。
 いやそれはもしかしたら、二人にとってはお互いなのかもしれない。今の二人を見ていると、そう思えてくる。

「……これでは、話が終わりませんね」
「そうですね……すみません、僕のせいで」
「いいえ、でもウォーラン殿下は、アヴェルド殿下とは全然違いますね」
「……兄上のようには、なりたくないと思っていますからね。まあ、そう思い始めたのは、最近のことですが」
「それは良いことだと思います」

 メルーナ嬢は、そこでラフェシア様の方を見た。
 恐らく、先程言われたことに答えようとしているのだろう。

「ラフェシア様、私はラウヴァット男爵家の屋敷に戻ろうと思います」
「お兄様と、話すことはできそう?」
「ええ、改めて話をしようと思います」

 メルーナ嬢の表情は、先程までと比べると幾分か明るくなっていた。
 今の彼女なら、きっと大丈夫だろう。未来に進んでいけるはずだ。
 そう思って、私はイルドラ殿下に笑顔を見せる。すると彼も、笑顔を返してくれた。
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