せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 次期国王として、気軽に出歩くのは危険だと認識しているのだろうか。それはもちろん必要なことだが、少々気にし過ぎのような気もする。
 やはり彼も、急に王位を継ぐ立場になって気負っているのかもしれない。これから向かう場所は、そんな彼に対しては丁度良い場所だといえる。

「まあ、とりあえず行きませんか? 後悔はさせませんから」
「……リルティア嬢がそんな風に強引に誘うなんて、少々珍しいな」
「え? そうでしょうか?」
「あなたは、理性的な女性だからな」

 イルドラ殿下は、苦笑いを浮かべていた。
 私はそんなに強引だっただろうか。理性的でもない気もする。
 ただ、今のイルドラ殿下の反応は悪くない。私の提案を受け入れてくれそうだ。

「しかしだからこそ、興味がある。リルティア嬢、俺をその場所まで連れて行ってくれ」
「ええ、もちろんです」

 私はイルドラ殿下の言葉に、ゆっくりと頷いた。
 こうして私達は、少し出掛けることにするのだった。
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