せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 兄弟のことを語るイルドラ殿下は、なんというか楽しそうだった。
 それは、アヴェルド殿下のことを語っていても変わらない。純粋だった頃は、本当に仲が良い兄弟だったということだろうか。
 それが既に戻って来ない過去であるということは、悲しい事実である。とはいえ、それは仕方ないことだ。年月がアヴェルド殿下を変えてしまったのだから。

「まあ、俺も父上や母上には怒られていたな。今ではもちろん落ち着いているからそういうことはなくなかったが、なんだか懐かしいな」
「イルドラ殿下は、怒られたいのですか?」
「いや、そういう訳ではないさ。というか、これから父上には怒られることになるだろうな。次期国王として、色々と叩き込まれそうだ」

 イルドラ殿下は、苦笑いを浮かべていた。
< 235 / 246 >

この作品をシェア

pagetop