せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 これから起こることは、決して望ましいことではないのだろう。それは当たり前だ。誰だって、怒られたくはない。

 しかし彼は、既に覚悟を決めている。もう迷いなどはないだろう。
 それは私も同じだ。王妃として、彼の隣に並び立てる。そういう人にならなければならない。

「私も、王妃様から色々と教えてもらう必要はありますね」
「言っておくが、母上も厳しい人だぞ?」
「それは怖いですね」
「まあ、いざとなったら、お互いに傷を舐め合うとしよう」
「ふふ、そうしましょうか」

 私とイルドラ殿下は、そこで笑い合った。
 こうやって和やかな時間を過ごせることが、なんだか幸せだ。その幸せとは、一体どういうものなのだろうか。
< 236 / 246 >

この作品をシェア

pagetop