せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
「私はきっと、もっと単純明快な……」
「リルティア嬢、待ってくれ」

 私の言葉を、イルドラ殿下は少し強引に止めてきた。
 それに私は、少し面食らってしまう。もしかして私が言おうとしていることは、イルドラ殿下にとって不都合なことなのだろうか。
 それは中々に、ショックなことだ。とはいえ、仕方ないことだともいえる。いくら婚約しているからといって、そこに恋愛関係のあれこれを持ち込みたくはないのかもしれないのだから。

「そこから先は、俺から言わせてくれ」
「え?」
「こういう時くらいは、格好つけたいものだからな。情けない話ではあるが……」
「それは……」

 イルドラ殿下の言葉によって、私はラフェシア様が言っていたことを理解することになった。
 本人も言っている通り、それは格好いいことではないだろう。ただ私は、そんな様子も愛おしく思えていた。
 私は思わず、笑ってしまっていた。自分でも思っていた以上に、私という人間は単純明快であるのかもしれない。
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