『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
「ちょっとやばいかもしれないな」

 新の顔が歪んだ。

「やばいって……」

 不安な声を出した考子が新の言葉を待った。

「実は昨年の12月にね、」

 新が口にした内容は衝撃的だった。
 それは、武漢市の医師から発せられた警告に関することだった。
 警告を発した医師は眼科医で、SARSに似た7人の症例に気づいた彼はすぐにSNSで同僚の医師に情報と警告を発信した。
 大流行が起きている可能性が高いから感染を防ぐための防護服着用が必要だと訴えたのだ。
 しかし、それを目にした警察は彼の言うことを虚偽だと決めつけ、このような違法行為を続ければ裁かれることになると脅した。
 そのため、貴重な情報が医療関係者に共有される機会が奪われてしまった。
 
「未知のウイルスが中国で広がっている可能性が高いと思う。日本でも時間の問題かもしれない」

「そうなの?」

 考子は思わずお腹に手をやった。
 妊娠している自分が感染したらと思うと、不安が津波のように押し寄せてきた。

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